コーラ片手に音楽を

好きな服、好きな音楽、好きな映画と。

靴磨のスゝメ② ―僕はこうして靴を磨く―

どうも。ながたつです。

さて、前回は道具紹介をしました。何事においても道具は大切ですよね。なぜ大切なのかと聞かれたらこう答えます。例えば、ギターをやるとします。いいギターって音は勿論よいのですが、なにより弾きやすいんですよ。すると、演奏に集中できるし、変なクセもつかなんです。つまり、いい道具はいい所作を教えてくれます。いい所作は、仕上がりにも少なからず響いてきます。なにより、作業のモチベーションもあがるし。そんな拘った道具を用いて、さらに拘っている磨き方を紹介したいと思います。

この記事を読む前に、まずは以下の記事をご覧ください。

 

coke-and-music.hatenablog.com

靴磨きの手順の紹介

さて、いよいよ手順を説明しましょう。念の為ことわりをいれますが、これがスムースレザーの手入れに関して述べています。スエード素材にはあてはまりませんのでご了解ください。なお、今回は黒靴を例に挙げています。本当は写真を載せるべきなのですが、諸般の都合でなかなか用意できず…もし、用意できたら追記として写真を載せますね。

2020/03/28追記

(漸く写真が撮れました!用意した靴はSandersのキャップトゥ。充分綺麗ですが、これを磨きました。なお、各工程での写真は道具を使った後の様子です。ご参考に。)

シューケア編

0.シューツリーを入れる

f:id:naga-tatsu:20200328144725j:plain

正直持っていない人のほうが多いと思いますが、僕が木製のツリーを入れていいます。最近は100円ショップでも置いてありますね。革をピンと張り、この後の作業を円滑にするために行います。ない時は、丸めた新聞紙でもいいかと。ちなみに、ツリーを入れる前に除菌シートで靴の中を拭きます。特に古着の靴を買った時は。つま先にえげつないほこりが溜まっていることも少なくないので笑

ただ、シューツリーって少し特殊な道具ってイメージもあるし、中を拭く作業は毎回行わないので0番とさせてもらいました。

1.馬毛ブラシでホコリを払う

f:id:naga-tatsu:20200328144759j:plain

まずは、馬毛ブラシを使って靴全体のホコリを払います。遠目でみると無意味に靴をなでているように見えるのですが、近くで見ると意外とホコリって溜まっているんですよ。特にコバの部分や羽根周りは、念入りにブラッシングを行います。これをしないとその後の作業でホコリを革にねじ込んでしまう可能性があるので手は抜けません。

2.リグロインでワックスの除去

f:id:naga-tatsu:20200328144847j:plain

リグロインという溶剤を用いて、前回乗せたワックスを除去します。靴にワックスがない場合はこの作業は割愛。この溶剤は非常に刺激が強いので、慎重さが求められます。布にとって擦るのですが、強く擦ると革が荒れます。荒れるというのは、ガサガサと毛羽立ったようになること。そうならないために、素早く、優しく撫でるようにし、革の艶がなくなったらやめることが大切です。強い溶剤で素早くワックスを落として、擦ることによる物理的ダメージを最小限にすることが最適解であると考えます。

3.Two Face Lotionで汚れ落とし

f:id:naga-tatsu:20200328144946j:plain

リグロインはワックスのあるところだけに用いるのに対して、この汚れ落としは靴全体に使います。これのよいところは、水性・油性汚れ両方に対応し、かつ洗浄力が強いこと。つまり、雨や知らぬ間についた油汚れなどをごっそり落としてくれます。しかし、洗浄力が強い、つまり革へのダメージも大きいということなので、リグロインと同じようにあまり擦らないように気をつけます。艶がなくなったら触れないよう注意。強い溶剤を使い、触れる回数を最低限に留めることを大切にしています。洗顔もゴシゴシせずに、優しくしますよね?それと考え方は近いかも。

汚れ落としは靴磨きにおいて、最も大切な作業であると考えています。しかし、落としすぎも禁物。栄養と汚れは厳密には分けられないですし。多少汚れが残っていても、程々に栄養も残すようなイメージで落とすと、トータルで革へのダメージを最小限に抑えることができると思います。

4.Leather Delicate Creamで水分補給

f:id:naga-tatsu:20200328145026j:plain

ここまでで汚れや古いクリームを落としてさっぱりしたので、いよいよ栄養補給に移ります。まずは水分補給としてデリケートクリーム(通称:デリクリ)を使います。これは靴が濡れんばかりにたっぷり塗っています。すると、ぐんぐん吸って、革がしっとりします。このしっとりさが履き心地をよくしてくれると思います。また、乾燥を防ぐことは、ヒビ割れのリスクを減らすことに繋がります。お肌も乾燥するとヒビ割れますよね。人間は治れど、革は一度破れたら戻りません。それを防ぐためにもこの作業は不可欠です。

5.Creme1925で油分補給

f:id:naga-tatsu:20200328145107j:plain

では、いよいよ靴磨きらしい工程に移ります。靴クリームは、昨今100円ショップにも売っており、はじめはそれでもいいと思います。けれど、なぜ僕がこのクリームを使っているのかといえば、80%はカッコいいからですが、前回の記事でも触れた通り、撥水効果を期待しているためです。

このとき大きい豚毛ブラシで塗り拡げます。小さいブラシを使ったり、指で直接塗る人が増えておりますが、僕がこのあと使う豚毛ブラシにつけて塗り拡げます。理由は簡単。ラクだから。量は片足で米粒2粒分が目安。理由はこれ以上塗ってもそこまで浸透しないから。あまりに乾燥している場合はもう少し量を増やしてもいいですが、このあとの乾拭きで面倒な思いをするので、少ないかな?って量で大丈夫です。アッパーは勿論、コバやヒールの側面も忘れずに満遍なく塗り広げたら少し時間を置き、少しでも浸透させます。このときマットな質感になりますが、でも大丈夫。この後、ツヤッツヤになりますよ。

6.豚毛&山羊毛ブラシでブラッシング

f:id:naga-tatsu:20200328145216j:plain

ためらうことはありません。日頃のストレスをぶつけるように思いっきり豚毛ブラシでブラッシングしましょう。動きは大きく。とにかく大きくブラシを動かすことが大切です。力加減は強く!とよく言われますが、細かく言うとブラシの毛が潰れないギリギリの具合ですかね。あんまり力を入れすぎても疲れてしまいますから。ここで靴は一気に艶々になるので感動しますよ〜!この時、必ずシワに沿ってブラシを動かしています。こうすると目に見えてクリームが浸透しますよ。

豚毛ブラシが終わったら山羊毛ブラシで優しくなでつけます。触れるか触れないかくらいのフェザータッチが大切。これで靴表面の余分なクリームを除きつつ、表面を綺麗に整えてくれて、艶と発色が一段と深くなります。ただ、山羊毛ブラシに関しては行わなくても大丈夫です。僕もたまに省略します。

7.乾拭き 

f:id:naga-tatsu:20200328151424j:plain

ブラッシングで艶々になったら、Tシャツの切れ端等で乾拭きをします。このときも力は入れない。フェザータッチを意識してください。乾拭きを終える目安ですが、指で直接触った時に引っかかりがなくなるまで。ブラッシング直後に指でスーっと触ると少しひっかかるんですよ。ひどいときは指紋も残りました。それがなくなったら乾拭きはおしまいです。汚れ落としの時のように、物理的ダメージは最小限に。

ここまでがシューケアです。これで充分綺麗になります!ここからはシューシャインと呼ばれる靴に化粧を施す作業に移ります。これで一段と靴が輝き、テンションがアガります笑

シューシャイン編

8.Bees wax Polishを乗せる

f:id:naga-tatsu:20200328145544j:plain

 ここからはシューシャインに移ります。申し上げたように、ここからはエクストラの作業です。つま先と踵(僕はつま先だけの時も多いです。)にワックスを乗せて、鏡のようにピカピカにしていきます。今回はつま先だけを光らせる想定で話をすすめましょう。

この作業は気分をアゲたい時や、結婚式に参加する時にしています。反対に、葬儀などに参列する際は絶対に行いません。TPOに応じた手入れが大前提です。

①ワックスを指先につけて、つま先に塗ります。この時、指先に付ける量が難しい。量は「ひとなで」が目安。ついているかついていないかくらいの量がちょうどいいです。

②これをつま先の先端からつけていくのがコツです。先端からつけていき、履きジワの5mm手前まで塗り広げていきます。履きジワに干渉すると、歩いていくうちにワックスのコーティングが割れるので厳禁。この時もフェザータッチでやさしく。ワックスを置くようなイメージで塗り広げるとうまくいきますね。必ず片足ずつ交互にやります。

③この作業をひたすら繰り返していきます。つけては塗り、つけては塗り…ワックスを足すタイミングは靴に塗ったら引っかかりが出てきたときです。ヌルっとした感触がザラッとしたら、ワックスを足しています。塗り方はつま先の先端からつま先全体に。いつもこれを繰り返すように意識しています。この時、つま先の側面も忘れないようにしています。

④これを繰り返す回数もまた、難しい。勿論、靴の表面によって回数は大きくかわるのですが、僕はつけては塗る作業を15回ほど繰り返しています。これでつま先全体が曇ってきたら完成です。この作業は「ベース作り」と呼ばれているのですが、このベースが仕上がりの肝となるので慎重さが求められます。

9.ネル生地で磨く

f:id:naga-tatsu:20200328145631j:plain

ベース作りが終わったら、ネル生地を指に巻いていよいよピカピカに!(僕はネル生地をわざわざユザワヤで買いましたがその必要はありません。Tシャツの切れ端でもできますよ。)

①指に布を巻いたら、布を水で濡らします。濡らし過ぎは厳禁。水の目安は2滴ほど。これを指先に馴染ませます。水で濡らす理由ですが、ワックスは油とロウでできています。水と油は混ざりませんよね?その性質をいかして、布にワックスが染み込むのを防ぐためです。また、水自体が研磨剤としての役割を果たしてくれるように思います。プロの料理人が包丁を水研ぎしますが、それと理屈は同じです。

②布が潤ったらワックスをつけていきます。この時もワックスの量は「ひとなで」。チョンチョンとつけたらいよいよ磨いていきます。

③つま先の先端からつま先全体に広げるように磨きます。この時、円を描くように指先を動かします。クルクルクルクル…とやさしく、やさしく。やっぱりフェザータッチを意識しています。すると、マットだったのが、ヌラっと光り、鱗のような磨き跡が浮かび上がります。これが気持ちいいんですよ…!

④指先の感触がザラッとしてきたら水1滴とワックス「ひとなで」を足します。では、いつまで繰り返すのか。気分と場合によりますが、僕は反射する照明の光の輪郭がハッキリするまで繰り返します。くっきりとした光になったらここでおしまいにして次の工程に移ります。

10.山羊毛ブラシで馴染ませる

f:id:naga-tatsu:20200328145713j:plain

 いよいよラストスパート!今度は布を指から外して、山羊毛ブラシに持ち替え。ブラシに2滴ほど水をつけ、ブラシ全体に馴染ませたら、靴全体にブラッシング。この時の力加減が難しい。僕は触れるか触れないかくらいの力加減です。空振りするくらい、やさしくブラッシングしております。

この作業はワックスを乗せた面と乗せていない面の境をぼかして、綺麗な光のグラデーションを浮かび上がらせつつ、ワックスの油分やロウを靴全体に行き渡らせてさらに綺麗な艶にしていく目的があります。この作業を行うとワックスを乗せた面はブラシ跡が残りますが心配なく。それであっています。

11.ネル生地で水研ぎ

f:id:naga-tatsu:20200328145924j:plain

 また布に切り替えます。この時、面を変えて、ワックスがついていない面を使います。理由は、その方が綺麗に仕上がるから。水を2滴つけて指先に馴染ませたら、フェザータッチofフェザータッチを意識して磨いていきます。この時も空振りするくらいで構いません。とにかくやさしく。磨く方向は常に縦方向。この方が綺麗に仕上がります。片足に2回ずつおこなったら完成です!お疲れさまでした〜。

12.Leather sole oilで栄養補給 

 靴がレザーソールの場合、最後にソールオイルを塗ります。地面に接している面だけに塗りソールに柔軟性をもたせています。この時地面に触れていない面にもオイルを塗ると、履いていく中でホコリがついてしまい不格好なので注意しています。

2020/03/28追記

(今回磨いたSandersの靴はラバーソールですので、この工程は省略しています。)

 

ようやく完成です!僕はシューケアで長くて15分。シューシャインを含めると長くて45分ほどかかります。何度か20分でシューシャインまでやったことがありますが、まだまだ仕上がりがイマイチです。

2020/03/28追記

(よくあるピカピカにしたよ!写真も載せてみます。今回は革の凹凸が激しく、思うように埋まりませんでした。エナメルっぽくもしたくないし、しかし、もう少し輪郭のある艶にしたいし…まだまだ掴めないですね笑)

f:id:naga-tatsu:20200328152912j:plain

僕がここまでして靴を磨く理由

文字に起してみると、まあ長いですね。こんなことを日頃趣味としてやっているのかと思うと、自分のことながら驚きを禁じえません。では、なぜ僕が靴磨きにここまで没頭しているのか。実はメンタルコントロールの一環なんですよ。

巷では「靴を磨いて己を磨く」という言葉が流布していますが、僕の場合、己が磨かれているとそこまで思えません。たしかに、靴磨きも含めて身なりを整えることで、下手な振る舞いはできないぞ!という気持ちにはなりますが、それだけでは自己研鑽と呼ぶに不十分。

しかし、辛いことがあった時、「ぼんやりとした不安」がある時、何もしないと頭の中で嫌なことって膨れ上がりますよね。それを落ち着かせ、自分の気持ちを整理し、感情を上手に操る手段として靴を磨きます。それで事態は解決しませんよ。でも、自分の内面を整えなければ、それこそ事態は好転しません。その第一歩として、儀式のように靴を磨いています。没入できるんですよ。足元という小さな世界をじっくり見ることで気持ちが落ち着いてくるんですね。

この記事を読んでくださる方も、自分の気持ちを落ち着かせる方法をそれぞれお持ちかと存じますが、もしそのような方法が見つからない方は、お持ちの靴を磨いてみてはいかがでしょうか。なんて、偉そうなことを申しておりますが、結局は楽しいんですよ。靴磨きって。