コーラ片手に音楽を

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16 Tambourines "How green is your valley?" ―過去を振り返る若者―

どうも。ながたつです。

平均して月1ペース更新のこのブログ。今日は、久しぶりに音楽の話をしようと思います。今までは音楽の話をする時、非常に切迫した、なにか思い詰めた表情でしたが、今回はカジュアルに。語らずに、感じましょう。

 16 Tambourines "How green is your valley?"について

今日は、我が家のレコードコレクションから引っ張り出しました。タイトル通り16 Tambourinesの"How green is your valley?"です。

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(16 Tambourinesの"How green is your valley?"。1989年発売。環境音楽でも収録されていそうなジャケ写。外装とは裏腹に非常に都会的な響きが印象的な1枚。)

曲順は以下の通り。

A1 Bathed In The Afterglow

A2 April

A3 Pokey Town

A4 If I Should Stay

A5 England

B1 Baby There Is Nothing Going On

B2 How Green Is Your Valley?

B3 A Love Like This

B4 When Lovers Walk

B5 This Is Not Love

A面・B面ともに盛り上げてから次第に落ち着かせるような展開です。アップテンポでグッと掴んで、次第に凪のような気持ちに。聴き終えた後がスッキリしていいですね。また、とてもメロディアスでポップ。Deacon Blueが好きな方にオススメしたい1枚です。

昔は、少しでもしっとりしていると物足りず、満足行きませんでしたが、最近はハイテンションが続くのもしんどい。語りってのは緩急が惹きつけるんだなあ。ふむふむ。アルバムの構成も例外ではなく、曲の配置が生む緩急に魅力が詰まっていましょう。1曲自体の展開や緩急を語ることはあっても、ストリーミングで音楽を聴く昨今では、アルバム全体のそれを考える機会はありませんでした。おもしろい。

さて、話はさておき、この中でどうも歌詞が面白そうな曲がありました。最近断続的に降る雨。のんびりこの曲の歌詞について書き連ねましょう。ようやく、この記事の方向が定まりましたよ〜笑

”England”から考える若者の回顧とは

このアルバムの中で1番僕を惹きつけた歌詞は、”England”でした。


New England - 16 Tambourines

 とりあえず、歌詞を載せます。併せて、現代語訳をつけました!部分的に間違っていると思いますが、参考にしてください。

 

New England takes its toll

And the rise in the suicides matches the dole

Her people live in dreams

As it's too much trouble see these things

これからのイングランドは代価を受け取ることに

そして失業手当をあてがうも自殺者は増えるばかり

国民は夢の中で暮らす

あまりに厳しい現実から目を背けるように

 

Now you're helped to buy your home

Till things go wrong and you're on you own

So don't you lose your work

They'll have you do down in the gutter like a piece of dirt

最近、家を買うのに援助がある

状況が悪化し、その責任をすべて負うまでは

だから仕事を失うことはない

ほこりのようなスラム街で騙される

 

New England, new England

Old values you've none

New England, new England

Slap my wrists

I'm afraid old England's gone

これからのイングランド

昔の価値観はもうそこにはない

これからのイングランド

はたきおとされたんだよ

在りし日の姿は消えてしまったのか

 

This land's still fair and green

If the people aren't the best I've ever seen

They live from day to day

With the promise of tax cuts on the way

この国はまだ公平でおおらかだ

まだみんな頑張れると思うんだ

毎日を生きているんだよ

税の負担が軽くなる期待のなかで

 

Deep within your hearts

I'm sure you feel torn apart

You know the price it seems

There is no value in England

あなたの気持ちに深く入り込み

傷つけられたと感じるであろう

価値があると思っているであろう

けど、もうイングランドではなんもならんのだよ

 

Words and music - Steve Roberts*1

 

この頃サッチャー政権下で*2、UKロックやブリットポップの話題でありがちな、サッチャーへのアンチテーゼとして語りたくなるのですが、結論が一辺倒になるので避けましょう。ですが、実はサッチャーこそが、この頃の音楽を作り上げたとも言えるで書いてはおきます。

どうでしょう。目の前の生活苦にあえぎ、在りし日を振り返る歌詞ではないでしょうか。あの頃はよかった。とまでは言わずとも、昔の価値観が捨てられてゆく様に対して苦い思いを抱えているのは明々白々。しかし、Steve Robertsはこの頃まだまだ若いはず。過去を振り返る若者というのは一見違和感がありますね。

 

若者と過去。若者と未来。

多様化・ダイバーシティと声高に叫ばれている昨今でも、若者は明るく、未来志向で、振り返るよりも今に全力!ってステレオタイプを知らず識らずに押し付けられてなりません。正確には、そのような価値観を軸に多様化という言葉が叫ばれていましょう。

けどね、そんな若者そういません。少なくとも、僕は明るくもないし、今に全力というより今がやっと。そんなもんです。生活が辛くなれば、過去を振り返るのは自然。未来を見ず、夢のなかに閉じこもりたくなるのはおかしくありません。1989年に、このような考察のキッカケを与えてくれる曲があったとは…みんな、考えていることは大体同じなんでしょう笑

人間、常に今を生きています。今という枠の中にしか存在できません。未来というのは概念に過ぎず、先の「今」がどうなるかは分からないし、そもそもそこに存在できる保証もありません。つまり、老若男女、常に過去と今はあれども、未来があるかはあやふやです。若者だって過去を振り返るし、年齢を問わず、誰でも「老害」になりえます。単に過ごしてきた時間で語れるほど、単純ではなさそうです。きっと、老いとは体を過去に向けて振り返ることで、幼さとは夢のなかに身を置くことで、若さとは今を軸に過去と未来を相対できることなのかなあ。

結局、毎度のように小難しいことを書き連ねてしまった。もともと、雨の日にオススメアルバム!って銘打ってブログを書こうとしたのに…笑

*1:https://steverobertsmusic.co.uk/about/に現在の彼の状況が載っていました。なんと、16 Tambourinesは2019年11月に再結成してたそうです…!

*2:マーガレット・サッチャー - Wikipedia