コーラ片手に音楽を

好きな服、好きな音楽、好きな映画と。

"God Help The Girl"と"The Goodbye Girl"を比して① ―大声で「好き」と―

どうも。ながたつです。

最近の時勢を考えると、どうも外出は躊躇われますね。歴史的・空間的に甚大な罹災をし、日常に通底する「あたりまえ」を問い直さざるを得なくなりました。日常がなにをして成され、またそこに潜む宿痾が露呈していましょう。それに対して、僕自身ができることは微々たるもの(あるいは皆無)ですが、考えることだけはやめないようにしないとなりません。

さて、縷縷とした小言はこの辺にして、最近はこの機会を活かして映画に浸かろうと、ひたすら映画に興じてました。たまたま家にあった様々なDVDを観たいように観ていたら、偶然にも比較したら面白いのでは?という組み合わせに出会い、せっかくなのでそれをまとめます。

先に話すと、今回はラブ・ロマンス映画の比較です。僕は昔からアクションよりもロマンスの方が好きで、それもほんのり陰がありつつ多幸感を主軸に据えたものが好きでたまりません!偏愛が過ぎますがお許しください笑

"God Help The Girl"のあらすじと感想

1つ目は、一部でオシャレ映画と評される"God Help The Girl"(2014年公開)

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あらすじ

スコットランドグラスゴーのとある街。入院中の少女イヴ(エミリー・ブラウニング)は、一人ピアノに向かい曲を書いていた。ある日、彼女は、病院を抜け出し向かったライブハウスで、アコースティック・ギターを抱えたジェームズ(オリー・アレクサンデル)に出会い、さらに友人のキャシー(ハンナ・マリー)を紹介された。 2人の少女と1人の少年は一緒に音楽を作り始める。魅力的なのにどこか孤独を感じさせるイヴ。密かにイヴに恋をする理屈屋のジェームズ。天真爛漫な年下のキャシー。その夏、3人の友情と恋が、音楽にのって始まった-。
引用元:https://ciatr.jp/movie/24569

ざっくり言うと、青春映画!それも音楽と恋と友情と!!いくつになっても、関心が絶えないテーマ。個人的な話ですが、在りし学生時代と重ねたくなっちゃうんです笑

感想

この映画は昔から大好きで、やはり音楽好きとしてはどうも外せません。以前、Instagramでもこの映画のサントラに触れたことがあります。さて、この映画の感想は大きく挙げて3点。

1.音楽のセンスが随一

 監督があのBelle & Sebastian(通称:ベルセバ)のボーカルStuart Murdochですから、さすが音楽は素晴らしいものばかり。少しナードで、個人的・内向的な歌詞だけど、あくまでポップな音楽が映画を彩ります。どの曲もいい意味で大衆的で、キャッチーなメロディが印象的…と文を書き連ねても仕方がありませんので、1曲お気に入りの曲を!


God Help the Girl - I'll Have To Dance With Cassie

この映画にもあてはまることですが、内容は暗くともそれを暗いままにせず、明るさや上向きに昇華するような音像が、ベルセバを含めたイギリスのポップスの特徴の1つであると思います。この映画もあとで詳述しますが、色彩豊かな映像が一貫している様子は見事であると評さざるを得ません。音楽と映像はある意味で同じであり、どちらも表層であると思いますが、これが深刻になりすぎないことって至難の業ですよね。(少なくとも、僕にとっては。)

音楽って本当に強い力を有しているんですね。どんなに憂鬱なテーマも、音に載せてしまえば不思議と受け入れられちゃう。自分がいま辛い思いをしていることを歌っていると「自分以外にもいるんだな」って勝手に孤独感が薄れていきます。僕にとって、この映画やその音楽はそんな存在です。

2.卓越したファッションセンス

このブログは様々なカルチャーをクロスオーバーして見よう、というコンセプトが根っこにありますが、それはこの映画の影響が少なからずあります。

この映画の映像にも音像にも通底しているのが「60年代の雰囲気」。僕の人生を決定づけたMODSカルチャーが隆盛した頃と同時期ですね。この映画自体は、2010年代を舞台にしているハズですが、ファッションはどう考えても60年代。(ちなみに、作中で主人公たちが街中に配るポスターやフライヤーも非常にいい。)

60年代だからオシャレ!と短絡的に言いませんが、それでも抗えない憧れを抱いてなりません。きっと、監督の趣味を全面に出したのでしょう。60年代の「THE・衣装」をモチーフにしたファッションは今でも見ますが*1、普段着の中にそのエッセンスを織り込んだ作品は見たことがなかったのでとても新鮮です。

60年代といっていも、MODSの他にヌーベルバーグやフレンチポップス、もう少し後にピーコックetc...様々なカルチャーがありますが、この映画はそのどれもを上手に組み合わせているのが秀逸な点だと思います。普段着から60年代を匂わせるのが本当に◎

3.脚本は…しかし、暗部の描写は丁寧

この映画、10年という構想時間を経て完成に至ったそうですが、その割にストーリーをもっと詰めて欲しかった…!と思うこともあります。唐突な展開というか、若干のご都合主義感は否めません。映画の構成としては、凡庸であると正直思ってしまいます。ですが、そこをウリにしている映画でもないのかな?とも思いますし、まあまあ。

構成はさておき、暗部の描写は素晴らしい。明るい映像や音楽でも、底に流れているものはとても暗い。そもそも、主人公のイヴが拒食症である設定だし、思慮のない性の奔放さも褒められたものではありません。周りに求めるばかりの不安定さ、自己中心的な態度が目立ちます。

しかし、それが音楽を作る原動力で、また、考え方を変えて、次のステージに向かおうとするキッカケにもなるのだから皮肉以外の言葉が見つかりません。この独善性や不安定さ、それがクリエイティビティに繋がることって人間の本質をついているようでなりませんが、あくまで明るく描いているから入ってくるし、説教臭くなくてステキ。

先ほど構成に少し文句をつけましたが、暗部の描き方とバンドという題材を掛け合わせてミュージカルにしたのは素晴らしいです。自然と歌に移るので、ミュージカルが苦手な人にもオススメできますね!!

ここで一息

いやあ、書き疲れた…笑

この後、次の映画に話を移すので一度切ります。次で会いましょう。昔のInstagramの投稿を載せちゃおうかな。うん、書いてあること大して変わらないなあ笑

https://www.instagram.com/p/B6FPhjKgYB-/

【今日の一枚】

寒くなるとネオアコが聴きたくなる今日この頃、映画『God Help The Girl』のサントラを聴きなおしてます。Belle and SebastianのボーカルStuart Murdochが監督した映画。映画自体はそこそこだけど笑、衣装は60's〜80'sを基調としており、映像全体がとにかくオシャレ!個人的には、『I'll Have To Dance With Cassie』が曲名の通り、踊れるナンバーで1番好きです。Stuart Murdochのナードさがいい意味で出ており、映像と音楽の溶け込み具合は流石の一言。映画を見て、サントラで復習すると、一層楽しめると思います。他の映画でもやりたいですよね、こういうコト。

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*1:実は乃木坂46の「せっかちなかたつむり」なんかはそのいい例だと思うんですよね。

16 Tambourines "How green is your valley?" ―過去を振り返る若者―

どうも。ながたつです。

平均して月1ペース更新のこのブログ。今日は、久しぶりに音楽の話をしようと思います。今までは音楽の話をする時、非常に切迫した、なにか思い詰めた表情でしたが、今回はカジュアルに。語らずに、感じましょう。

 16 Tambourines "How green is your valley?"について

今日は、我が家のレコードコレクションから引っ張り出しました。タイトル通り16 Tambourinesの"How green is your valley?"です。

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(16 Tambourinesの"How green is your valley?"。1989年発売。環境音楽でも収録されていそうなジャケ写。外装とは裏腹に非常に都会的な響きが印象的な1枚。)

曲順は以下の通り。

A1 Bathed In The Afterglow

A2 April

A3 Pokey Town

A4 If I Should Stay

A5 England

B1 Baby There Is Nothing Going On

B2 How Green Is Your Valley?

B3 A Love Like This

B4 When Lovers Walk

B5 This Is Not Love

A面・B面ともに盛り上げてから次第に落ち着かせるような展開です。アップテンポでグッと掴んで、次第に凪のような気持ちに。聴き終えた後がスッキリしていいですね。また、とてもメロディアスでポップ。Deacon Blueが好きな方にオススメしたい1枚です。

昔は、少しでもしっとりしていると物足りず、満足行きませんでしたが、最近はハイテンションが続くのもしんどい。語りってのは緩急が惹きつけるんだなあ。ふむふむ。アルバムの構成も例外ではなく、曲の配置が生む緩急に魅力が詰まっていましょう。1曲自体の展開や緩急を語ることはあっても、ストリーミングで音楽を聴く昨今では、アルバム全体のそれを考える機会はありませんでした。おもしろい。

さて、話はさておき、この中でどうも歌詞が面白そうな曲がありました。最近断続的に降る雨。のんびりこの曲の歌詞について書き連ねましょう。ようやく、この記事の方向が定まりましたよ〜笑

”England”から考える若者の回顧とは

このアルバムの中で1番僕を惹きつけた歌詞は、”England”でした。


New England - 16 Tambourines

 とりあえず、歌詞を載せます。併せて、現代語訳をつけました!部分的に間違っていると思いますが、参考にしてください。

 

New England takes its toll

And the rise in the suicides matches the dole

Her people live in dreams

As it's too much trouble see these things

これからのイングランドは代価を受け取ることに

そして失業手当をあてがうも自殺者は増えるばかり

国民は夢の中で暮らす

あまりに厳しい現実から目を背けるように

 

Now you're helped to buy your home

Till things go wrong and you're on you own

So don't you lose your work

They'll have you do down in the gutter like a piece of dirt

最近、家を買うのに援助がある

状況が悪化し、その責任をすべて負うまでは

だから仕事を失うことはない

ほこりのようなスラム街で騙される

 

New England, new England

Old values you've none

New England, new England

Slap my wrists

I'm afraid old England's gone

これからのイングランド

昔の価値観はもうそこにはない

これからのイングランド

はたきおとされたんだよ

在りし日の姿は消えてしまったのか

 

This land's still fair and green

If the people aren't the best I've ever seen

They live from day to day

With the promise of tax cuts on the way

この国はまだ公平でおおらかだ

まだみんな頑張れると思うんだ

毎日を生きているんだよ

税の負担が軽くなる期待のなかで

 

Deep within your hearts

I'm sure you feel torn apart

You know the price it seems

There is no value in England

あなたの気持ちに深く入り込み

傷つけられたと感じるであろう

価値があると思っているであろう

けど、もうイングランドではなんもならんのだよ

 

Words and music - Steve Roberts*1

 

この頃サッチャー政権下で*2、UKロックやブリットポップの話題でありがちな、サッチャーへのアンチテーゼとして語りたくなるのですが、結論が一辺倒になるので避けましょう。ですが、実はサッチャーこそが、この頃の音楽を作り上げたとも言えるで書いてはおきます。

どうでしょう。目の前の生活苦にあえぎ、在りし日を振り返る歌詞ではないでしょうか。あの頃はよかった。とまでは言わずとも、昔の価値観が捨てられてゆく様に対して苦い思いを抱えているのは明々白々。しかし、Steve Robertsはこの頃まだまだ若いはず。過去を振り返る若者というのは一見違和感がありますね。

 

若者と過去。若者と未来。

多様化・ダイバーシティと声高に叫ばれている昨今でも、若者は明るく、未来志向で、振り返るよりも今に全力!ってステレオタイプを知らず識らずに押し付けられてなりません。正確には、そのような価値観を軸に多様化という言葉が叫ばれていましょう。

けどね、そんな若者そういません。少なくとも、僕は明るくもないし、今に全力というより今がやっと。そんなもんです。生活が辛くなれば、過去を振り返るのは自然。未来を見ず、夢のなかに閉じこもりたくなるのはおかしくありません。1989年に、このような考察のキッカケを与えてくれる曲があったとは…みんな、考えていることは大体同じなんでしょう笑

人間、常に今を生きています。今という枠の中にしか存在できません。未来というのは概念に過ぎず、先の「今」がどうなるかは分からないし、そもそもそこに存在できる保証もありません。つまり、老若男女、常に過去と今はあれども、未来があるかはあやふやです。若者だって過去を振り返るし、年齢を問わず、誰でも「老害」になりえます。単に過ごしてきた時間で語れるほど、単純ではなさそうです。きっと、老いとは体を過去に向けて振り返ることで、幼さとは夢のなかに身を置くことで、若さとは今を軸に過去と未来を相対できることなのかなあ。

結局、毎度のように小難しいことを書き連ねてしまった。もともと、雨の日にオススメアルバム!って銘打ってブログを書こうとしたのに…笑

*1:https://steverobertsmusic.co.uk/about/に現在の彼の状況が載っていました。なんと、16 Tambourinesは2019年11月に再結成してたそうです…!

*2:マーガレット・サッチャー - Wikipedia

靴磨のスゝメ② ―僕はこうして靴を磨く―

どうも。ながたつです。

さて、前回は道具紹介をしました。何事においても道具は大切ですよね。なぜ大切なのかと聞かれたらこう答えます。例えば、ギターをやるとします。いいギターって音は勿論よいのですが、なにより弾きやすいんですよ。すると、演奏に集中できるし、変なクセもつかなんです。つまり、いい道具はいい所作を教えてくれます。いい所作は、仕上がりにも少なからず響いてきます。なにより、作業のモチベーションもあがるし。そんな拘った道具を用いて、さらに拘っている磨き方を紹介したいと思います。

この記事を読む前に、まずは以下の記事をご覧ください。

 

coke-and-music.hatenablog.com

靴磨きの手順の紹介

さて、いよいよ手順を説明しましょう。念の為ことわりをいれますが、これがスムースレザーの手入れに関して述べています。スエード素材にはあてはまりませんのでご了解ください。なお、今回は黒靴を例に挙げています。本当は写真を載せるべきなのですが、諸般の都合でなかなか用意できず…もし、用意できたら追記として写真を載せますね。

2020/03/28追記

(漸く写真が撮れました!用意した靴はSandersのキャップトゥ。充分綺麗ですが、これを磨きました。なお、各工程での写真は道具を使った後の様子です。ご参考に。)

シューケア編

0.シューツリーを入れる

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正直持っていない人のほうが多いと思いますが、僕が木製のツリーを入れていいます。最近は100円ショップでも置いてありますね。革をピンと張り、この後の作業を円滑にするために行います。ない時は、丸めた新聞紙でもいいかと。ちなみに、ツリーを入れる前に除菌シートで靴の中を拭きます。特に古着の靴を買った時は。つま先にえげつないほこりが溜まっていることも少なくないので笑

ただ、シューツリーって少し特殊な道具ってイメージもあるし、中を拭く作業は毎回行わないので0番とさせてもらいました。

1.馬毛ブラシでホコリを払う

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まずは、馬毛ブラシを使って靴全体のホコリを払います。遠目でみると無意味に靴をなでているように見えるのですが、近くで見ると意外とホコリって溜まっているんですよ。特にコバの部分や羽根周りは、念入りにブラッシングを行います。これをしないとその後の作業でホコリを革にねじ込んでしまう可能性があるので手は抜けません。

2.リグロインでワックスの除去

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リグロインという溶剤を用いて、前回乗せたワックスを除去します。靴にワックスがない場合はこの作業は割愛。この溶剤は非常に刺激が強いので、慎重さが求められます。布にとって擦るのですが、強く擦ると革が荒れます。荒れるというのは、ガサガサと毛羽立ったようになること。そうならないために、素早く、優しく撫でるようにし、革の艶がなくなったらやめることが大切です。強い溶剤で素早くワックスを落として、擦ることによる物理的ダメージを最小限にすることが最適解であると考えます。

3.Two Face Lotionで汚れ落とし

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リグロインはワックスのあるところだけに用いるのに対して、この汚れ落としは靴全体に使います。これのよいところは、水性・油性汚れ両方に対応し、かつ洗浄力が強いこと。つまり、雨や知らぬ間についた油汚れなどをごっそり落としてくれます。しかし、洗浄力が強い、つまり革へのダメージも大きいということなので、リグロインと同じようにあまり擦らないように気をつけます。艶がなくなったら触れないよう注意。強い溶剤を使い、触れる回数を最低限に留めることを大切にしています。洗顔もゴシゴシせずに、優しくしますよね?それと考え方は近いかも。

汚れ落としは靴磨きにおいて、最も大切な作業であると考えています。しかし、落としすぎも禁物。栄養と汚れは厳密には分けられないですし。多少汚れが残っていても、程々に栄養も残すようなイメージで落とすと、トータルで革へのダメージを最小限に抑えることができると思います。

4.Leather Delicate Creamで水分補給

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ここまでで汚れや古いクリームを落としてさっぱりしたので、いよいよ栄養補給に移ります。まずは水分補給としてデリケートクリーム(通称:デリクリ)を使います。これは靴が濡れんばかりにたっぷり塗っています。すると、ぐんぐん吸って、革がしっとりします。このしっとりさが履き心地をよくしてくれると思います。また、乾燥を防ぐことは、ヒビ割れのリスクを減らすことに繋がります。お肌も乾燥するとヒビ割れますよね。人間は治れど、革は一度破れたら戻りません。それを防ぐためにもこの作業は不可欠です。

5.Creme1925で油分補給

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では、いよいよ靴磨きらしい工程に移ります。靴クリームは、昨今100円ショップにも売っており、はじめはそれでもいいと思います。けれど、なぜ僕がこのクリームを使っているのかといえば、80%はカッコいいからですが、前回の記事でも触れた通り、撥水効果を期待しているためです。

このとき大きい豚毛ブラシで塗り拡げます。小さいブラシを使ったり、指で直接塗る人が増えておりますが、僕がこのあと使う豚毛ブラシにつけて塗り拡げます。理由は簡単。ラクだから。量は片足で米粒2粒分が目安。理由はこれ以上塗ってもそこまで浸透しないから。あまりに乾燥している場合はもう少し量を増やしてもいいですが、このあとの乾拭きで面倒な思いをするので、少ないかな?って量で大丈夫です。アッパーは勿論、コバやヒールの側面も忘れずに満遍なく塗り広げたら少し時間を置き、少しでも浸透させます。このときマットな質感になりますが、でも大丈夫。この後、ツヤッツヤになりますよ。

6.豚毛&山羊毛ブラシでブラッシング

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ためらうことはありません。日頃のストレスをぶつけるように思いっきり豚毛ブラシでブラッシングしましょう。動きは大きく。とにかく大きくブラシを動かすことが大切です。力加減は強く!とよく言われますが、細かく言うとブラシの毛が潰れないギリギリの具合ですかね。あんまり力を入れすぎても疲れてしまいますから。ここで靴は一気に艶々になるので感動しますよ〜!この時、必ずシワに沿ってブラシを動かしています。こうすると目に見えてクリームが浸透しますよ。

豚毛ブラシが終わったら山羊毛ブラシで優しくなでつけます。触れるか触れないかくらいのフェザータッチが大切。これで靴表面の余分なクリームを除きつつ、表面を綺麗に整えてくれて、艶と発色が一段と深くなります。ただ、山羊毛ブラシに関しては行わなくても大丈夫です。僕もたまに省略します。

7.乾拭き 

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ブラッシングで艶々になったら、Tシャツの切れ端等で乾拭きをします。このときも力は入れない。フェザータッチを意識してください。乾拭きを終える目安ですが、指で直接触った時に引っかかりがなくなるまで。ブラッシング直後に指でスーっと触ると少しひっかかるんですよ。ひどいときは指紋も残りました。それがなくなったら乾拭きはおしまいです。汚れ落としの時のように、物理的ダメージは最小限に。

ここまでがシューケアです。これで充分綺麗になります!ここからはシューシャインと呼ばれる靴に化粧を施す作業に移ります。これで一段と靴が輝き、テンションがアガります笑

シューシャイン編

8.Bees wax Polishを乗せる

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 ここからはシューシャインに移ります。申し上げたように、ここからはエクストラの作業です。つま先と踵(僕はつま先だけの時も多いです。)にワックスを乗せて、鏡のようにピカピカにしていきます。今回はつま先だけを光らせる想定で話をすすめましょう。

この作業は気分をアゲたい時や、結婚式に参加する時にしています。反対に、葬儀などに参列する際は絶対に行いません。TPOに応じた手入れが大前提です。

①ワックスを指先につけて、つま先に塗ります。この時、指先に付ける量が難しい。量は「ひとなで」が目安。ついているかついていないかくらいの量がちょうどいいです。

②これをつま先の先端からつけていくのがコツです。先端からつけていき、履きジワの5mm手前まで塗り広げていきます。履きジワに干渉すると、歩いていくうちにワックスのコーティングが割れるので厳禁。この時もフェザータッチでやさしく。ワックスを置くようなイメージで塗り広げるとうまくいきますね。必ず片足ずつ交互にやります。

③この作業をひたすら繰り返していきます。つけては塗り、つけては塗り…ワックスを足すタイミングは靴に塗ったら引っかかりが出てきたときです。ヌルっとした感触がザラッとしたら、ワックスを足しています。塗り方はつま先の先端からつま先全体に。いつもこれを繰り返すように意識しています。この時、つま先の側面も忘れないようにしています。

④これを繰り返す回数もまた、難しい。勿論、靴の表面によって回数は大きくかわるのですが、僕はつけては塗る作業を15回ほど繰り返しています。これでつま先全体が曇ってきたら完成です。この作業は「ベース作り」と呼ばれているのですが、このベースが仕上がりの肝となるので慎重さが求められます。

9.ネル生地で磨く

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ベース作りが終わったら、ネル生地を指に巻いていよいよピカピカに!(僕はネル生地をわざわざユザワヤで買いましたがその必要はありません。Tシャツの切れ端でもできますよ。)

①指に布を巻いたら、布を水で濡らします。濡らし過ぎは厳禁。水の目安は2滴ほど。これを指先に馴染ませます。水で濡らす理由ですが、ワックスは油とロウでできています。水と油は混ざりませんよね?その性質をいかして、布にワックスが染み込むのを防ぐためです。また、水自体が研磨剤としての役割を果たしてくれるように思います。プロの料理人が包丁を水研ぎしますが、それと理屈は同じです。

②布が潤ったらワックスをつけていきます。この時もワックスの量は「ひとなで」。チョンチョンとつけたらいよいよ磨いていきます。

③つま先の先端からつま先全体に広げるように磨きます。この時、円を描くように指先を動かします。クルクルクルクル…とやさしく、やさしく。やっぱりフェザータッチを意識しています。すると、マットだったのが、ヌラっと光り、鱗のような磨き跡が浮かび上がります。これが気持ちいいんですよ…!

④指先の感触がザラッとしてきたら水1滴とワックス「ひとなで」を足します。では、いつまで繰り返すのか。気分と場合によりますが、僕は反射する照明の光の輪郭がハッキリするまで繰り返します。くっきりとした光になったらここでおしまいにして次の工程に移ります。

10.山羊毛ブラシで馴染ませる

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 いよいよラストスパート!今度は布を指から外して、山羊毛ブラシに持ち替え。ブラシに2滴ほど水をつけ、ブラシ全体に馴染ませたら、靴全体にブラッシング。この時の力加減が難しい。僕は触れるか触れないかくらいの力加減です。空振りするくらい、やさしくブラッシングしております。

この作業はワックスを乗せた面と乗せていない面の境をぼかして、綺麗な光のグラデーションを浮かび上がらせつつ、ワックスの油分やロウを靴全体に行き渡らせてさらに綺麗な艶にしていく目的があります。この作業を行うとワックスを乗せた面はブラシ跡が残りますが心配なく。それであっています。

11.ネル生地で水研ぎ

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 また布に切り替えます。この時、面を変えて、ワックスがついていない面を使います。理由は、その方が綺麗に仕上がるから。水を2滴つけて指先に馴染ませたら、フェザータッチofフェザータッチを意識して磨いていきます。この時も空振りするくらいで構いません。とにかくやさしく。磨く方向は常に縦方向。この方が綺麗に仕上がります。片足に2回ずつおこなったら完成です!お疲れさまでした〜。

12.Leather sole oilで栄養補給 

 靴がレザーソールの場合、最後にソールオイルを塗ります。地面に接している面だけに塗りソールに柔軟性をもたせています。この時地面に触れていない面にもオイルを塗ると、履いていく中でホコリがついてしまい不格好なので注意しています。

2020/03/28追記

(今回磨いたSandersの靴はラバーソールですので、この工程は省略しています。)

 

ようやく完成です!僕はシューケアで長くて15分。シューシャインを含めると長くて45分ほどかかります。何度か20分でシューシャインまでやったことがありますが、まだまだ仕上がりがイマイチです。

2020/03/28追記

(よくあるピカピカにしたよ!写真も載せてみます。今回は革の凹凸が激しく、思うように埋まりませんでした。エナメルっぽくもしたくないし、しかし、もう少し輪郭のある艶にしたいし…まだまだ掴めないですね笑)

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僕がここまでして靴を磨く理由

文字に起してみると、まあ長いですね。こんなことを日頃趣味としてやっているのかと思うと、自分のことながら驚きを禁じえません。では、なぜ僕が靴磨きにここまで没頭しているのか。実はメンタルコントロールの一環なんですよ。

巷では「靴を磨いて己を磨く」という言葉が流布していますが、僕の場合、己が磨かれているとそこまで思えません。たしかに、靴磨きも含めて身なりを整えることで、下手な振る舞いはできないぞ!という気持ちにはなりますが、それだけでは自己研鑽と呼ぶに不十分。

しかし、辛いことがあった時、「ぼんやりとした不安」がある時、何もしないと頭の中で嫌なことって膨れ上がりますよね。それを落ち着かせ、自分の気持ちを整理し、感情を上手に操る手段として靴を磨きます。それで事態は解決しませんよ。でも、自分の内面を整えなければ、それこそ事態は好転しません。その第一歩として、儀式のように靴を磨いています。没入できるんですよ。足元という小さな世界をじっくり見ることで気持ちが落ち着いてくるんですね。

この記事を読んでくださる方も、自分の気持ちを落ち着かせる方法をそれぞれお持ちかと存じますが、もしそのような方法が見つからない方は、お持ちの靴を磨いてみてはいかがでしょうか。なんて、偉そうなことを申しておりますが、結局は楽しいんですよ。靴磨きって。